「相続の税金対策」で真っ先に思い浮かぶものって、なんでしょう?
生命保険や現物不動産ですかね。
生命保険には国が認めた非課税枠がありますし、保険料控除もありますから、まず検討するべき手段ですよね。
贈与を使って、次世代に資産を渡していくのにも、有効に使える手段です。
でも、抜本的な税金対策は取りづらかったりします。
「相続財産の評価額を引き下げて、納税額そのものを削減する」という対策です。
そこで、現物不動産が使われているわけですね。
現物不動産を使った相続税の削減
キャッシュを不動産に変えると、相続税が安くなります。
不動産は相続税評価額と実勢価格が異なるのと、税制上の特典があるからですね。
つまり、市場価格と相続や贈与で計算する価格に、ギャップがあるわけです。
仮に、配偶者がもうお亡くなりになっていて、子どもが1人だけいるというケースの場合。
1億円を全部キャッシュで持っていた場合、相続税は約1,220万円です。
もしこれを1億円相当のアパートかマンションに変えると、相続税は約160万円ですみます。
(5割まで相続税評価額を抑えられたと仮定)
なので、資産家は不動産を使った相続対策をするわけです。
現物不動産の落とし穴
でもですね。
気をつけないといけない事が盛り沢山です。
・借入という負債が残る
アパートやマンション一棟は数千万〜数億円になりますから、銀行等から融資を受けるのが普通です。
借入などの負債は相続財産を減らしますので、その意味でも相続税対策になるわけですね。
でも、相続人はこの負債を当然ですが引き継ぎます。
ちゃんと物件そのものから利益が出て、その範囲で返済していけることが大前提です。
・管理が大変
私も投資用マンションを持ってますが(ワンルームです)、結構手間がかかります。
確定申告の時期に不動産所得があると、数時間は費やしますね。自分でやると。
手離れがあんまりよくないんですよ。
私はワンルームなので全然マシですが、一棟ものとか自分で管理までやるとなると、もう大変です。
とても片手間ですむものではありません。
・ちゃんと収益は出るのか
これ、本当に大事です。
ここを軽く考えて、田舎の土地に融資を受けてアパートを建てたけど、空室だらけ。返済しきれなくなったなんてケース、よく聞きますよね。
キャッシュが豊富にあれば損失を穴埋めできますが、そうでないと大変な事になります。
突発的な支出もありますし(エアコンが壊れた、壁紙の張り替えetc)、諸経費など物件購入費以外のお金も色々とかかります。
相続税対策で買ったのに、かえって支出が増えるなんてのは論外だと思っています。
・不動産は分けられない
相続人が複数いるケースでは、当然それぞれに相続(あるいは贈与)をしないと、絶対に揉めます。
キャッシュや生命保険なら簡単に分けられますが、不動産はそういうわけにいきません。
持分共有という手もありますが、現実的に管理をするのは一人なので、利益の分配がきちんとなされるのか難しい面があります。
売却時にスピーディな意思決定もできません。(持分を持っている全員が納得しないと処分できません)
なので、現実的には物件ごとに相続や贈与をするケースが多いのですが、平等性に問題が残ってしまうわけです。
不動産小口信託受益権とは
そこで、現物不動産のデメリットを少しでも抑えることができないか?と開発されたのが、不動産小口信託受益権です。
「一棟モノの不動産を信託して権利を細かく分け、受益者は利益のみ受け取る」というスキームです。
つまり、普通なら買えないような超都心の一棟物件を、「利益を受け取る権利だけ安く購入できる」わけです。
メリット
まずはメリットから見ていきます。
・少額から投資できる
1,000万円くらいから投資できる物件が多いようです。
超都心の一棟物件なんて普通に億単位ですからね、これはメリットです。
諸経費もほとんどかかりません。
・分けて財産を渡せる
「収益を受け取る権利」ですので、1,000万円を長男、もう1,000万円を次男など、分けて渡すことができます。
一棟物件では難しかった複数相続人への贈与が、簡単にできるわけです。
・収益が安定的
不動産は「物件に空きがなく、家賃下落や諸経費なども想定して、ちゃんと収益を得られるか?」が重要です。
東京の都心部にある優良物件の小口化商品は、リスクを相当に抑えられます。
ワンルームだと空き室=即マイナスですし、一棟モノはこんな値段じゃ買えません。
・相続税、贈与税の評価額が約8割も引き下げられる
これです。
この特徴があるからこそ、事前贈与で大活躍するわけです。
1億円のキャッシュをこれに置き換えたら、2,000万の相続税評価で済むってことですから。
税金対策としては、ものすごい効果があります。
・大手がスキームを組んでいるので安心
不動産は新築中古含め、様々な業者が入り乱れてます。正直、怪しい会社もあったりしますよね・・・
不動産小口信託は、大手の不動産会社が手掛けている事が多いです。
大手だから無条件でいいわけではないですが、安心材料にはなりますよね。
・手離れが良い
信託スキームを使うので、管理の手間は全く発生しません。
収益の数字管理と、税務申告くらいですね。
デメリット
次に、デメリットです。
あくまで「不動産を活用した相続対策の一つ」ですので、投資に目が行くと、魅力は薄れます。
・利回りは少ない
物件によって異なりますが、年間利回りで1%後半〜3%くらいが多いかと思います。
都心のワンルームと同じくらいです。
これで儲けようという利回りではありません。
・融資は使えない
現物不動産では融資が使えますが、小口信託では使えません。
なので「手元キャッシュに余裕のある方が相続税対策(事前贈与)で使う」のが一般的です。
・中途解約ができない
信託期間というものがあり、その間は、原則として持ち続けることになります。
これも物件によって異なりますが、おおよそ7年〜10年くらいです。
贈与が終わったらすぐ現金化するなんてのは、ムリです。
・売却時期を指定できない
物件の売却は、販売会社が行います。沢山の人で分けて権利を持つので、当然ですね。
売却時に収益が精算され購入者全員に分配される、という仕組みです。
売却額が購入額より下がっていれば、損失を被ってしまいます。
なので、物件そのものの価値(特に立地)がとても大事になってくるんですね。
・税制が変わる可能性がある
節税はいたちごっこです。
いつまでも永久に大丈夫な節税スキームというものは、存在しません。
物件の数には限りがありますので、ある意味早いもの勝ちです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
つまり「利回りはそれほどではないけど、キャッシュを超安定的な収益資産に変えて事前贈与し、絶大な税金削減効果を享受する」という商材です。
うまく使えば、税金を相当に抑えて資産を移転できます。
これだけでも有用な商材ですが、これ、法人でも使えるんです。
法人は購入から4年たてば不動産評価が時価になりますが、この商材も同じです。
つまり、自社株式の評価額を大きく引き下げるのにも使えるわけですよ。
法人の現金をこれに置き換えれば、株式の評価額を大幅に引き下げることが可能です。なんせ「評価額8割減」ですから。
商材の使い所を考えながら、有効に機能させたいですね。